theGreen REPORT

施設関連

2021.12.04

15年目の想い、ピザに絵画にじわり滲んで。「いんば学舎・オソロク倶楽部」

この度theGreenを舞台に行われる『まるっとみんなで映画祭』は、日本初のインクルーシブなオンライン型劇場・THEATRE for ALLが主催するイベントで、障がいの有無や言語の理解に関わらず子どもから大人まで楽しめる内容となっています。

開催日の12月4日を含む7日間(12月3日〜9日)は、実は「障害者週間」。障害者福祉への認知と理解を深め、社会・経済・文化その他における障がい者の積極的な参画のために、と制定されたものです。

theGreenきってのアーティスティックな空間・いんば学舎のアトリエもまた、障害者福祉施設・いんば学舎により運営される場ですが、同団体が草深(そうふけ)の緑深い土地で営む「オソロク倶楽部」もやはり、今この時期に改めて注目したい場所です。

有機栽培で育てるほうれん草。夏時期にはトマト、なす、ピーマンを。またハウス栽培では季節に応じてトマトやレタス、ルッコラも

田畑での農作業、ピザレストランやパン工房の営業、またアトリエ兼ギャラリーでの創作や作品販売といった多岐に渡る活動が、就労支援の一環として、ここでなされています。

倶楽部の施設長である佐藤直人さんは、いんば学舎の運営に携わることかれこれ25年。2007年5月設立のオソロク倶楽部にもその計画当初から関わり、平日でも来客が絶えない現在のレストランほか、今ここで繰り広げられる日常をあらゆる関係者と共につくり上げてきました。

倶楽部の歩みを回想するその口ぶりはいたって自然体で、常日頃より大局的に、息長く事に当たってきたことが見てとれます。

「障がい者への就労支援のかたちとして、レストランやパン工房に挑戦したのも地域の中では割と早かった方だとは思います。(この施設に所属する)メンバーが地域の皆さんと日常的に直接触れ合える場を作ってみたかったのです。調理や接客が不向きというケースもあるので、別途農作業や食品加工の作業班も整えておきつつ。メンバーごとに各自自分に合った作業に就くことが出来るように運営してきました。

障害者福祉施設、というと私が入職したての頃などは、例えば箱折りのような室内で軽作業に従事することが今以上に一般的でした。でも、いんば学舎としてはより屋外や自然の近くで過ごす時間を大事にしたかったんです。自然と共にあってこそ、心身すこやかに生きていけるはずだと。この姿勢は私たちの精神の核をなすものです」

市のマスコットキャラ・いんザイくんの焼き印入り「オソロクカステラ」も並ぶパン工房の店頭

倶楽部に所属する各メンバーが日々ここに通うことで、何がしかの生きがいを見つけられる場でありたいという想い。そして来客を前提とした店舗空間としてのあらゆる創意工夫の積み重ね。それらは今日、ここを訪ねて見つかる様々な魅力として確かに実を結んでいるように思われます。接客担当メンバーとのコミュニケーションに限った話ではありません。

トッピングにはハウス栽培で作ったルッコラも。足し合わせればいっそうの彩り

例えば、ピザレストラン「PIZZERIA OSOROKU」のテラス席。小高い丘に向かって広がる林を借景に食事できるのはなんとも気分よいです。各種ナポリ風ピザは生地が外はカリッと・中はもちもちというコントラストを含んだ美味しさ。「パン工房 オソロク倶楽部」が手がけるパンもまた、食パン、クロワッサンといったスタンダード系は言うに及ばず、分厚さに思わず食指が動くロースカツサンドなど、充実のラインナップを誇ります。

自家製ベーコン、それにすぐ近くの畑で育てたほうれん草も入ったクリームパスタといい、他ならぬこの土地に根ざした味わいの数々には、単に美味しいという以上の、もっと地に足のついたよろこびがあります。

かたや隣接する「森のアトリエ」には絵画作品、およびそれが縮小サイズで載ったポストカードやカレンダー、それにメモ帳やぼち袋といった紙モノもあれば、マグカップや箸置きなどの陶器類、トートバッグからブローチ・バレッタまで。

概念的に既に見知ったものとして捉えるのではなく、いま目の前に映る色やカタチそのものに焦点が当たることで浮き彫りになる、そんな美しさとの出会いもここにはあります。

外界の緑や空気とひとつながりであるかのような展示スペースの中、作家の感性と心の芯の部分で相通じるものを覚えたり、長らく見過ごしていた感覚をふいに取り戻す体験は新鮮です。とかく生産性や合理性ばかりが優先される社会にあって、障がいの垣根を無効化する優れたコミュニケーションのヒントがここにはあるようにも思われます。

「農作業や工房/店舗での仕組み作りや運営の場では、気を付けてはいてもなお指導する/されるという関係性に陥りがち。やもすれば職員・メンバー問わず時に疲弊してしまいかねないので」とのいきさつで始められたアート制作。メンバーが純粋に自身と向き合い、自分の意思でものごとを進められるのがよかったようで「こういう多方面にわたる取り組みには、互いを補完し好影響を与えているところがあると思う」と佐藤さん。

怖録(おそろく)という、珍しくもどこか牧歌的な響きのするこの土地の字(あざな)。それをそのまま冠したこの施設で、その名にたがわぬ独特の穏やかさを、ぜひ、感じてみてください。

自作野菜の販売コーナーが、theGreenの「いんば学舎のアトリエ」にも

社会福祉法人印旛福祉会 いんば学舎・オソロク倶楽部
『パン工房』『ピザレストラン』『森のアトリエ』
住所:印西市草深485-3
TEL : 0476-36-7555
営業時間:11:00-15:30
定休日:日休・夏季冬季休
WEB:www.inba-g.or.jp/shisetsu03.html
SNS:www.instagram.com/osorokuclub/

新型コロナウイルス感染防止対策について
店舗では以下の対策を実施しています。ご理解とご協力をお願いいたします。
共通事項
・出勤時、スタッフの検温とバイタルチェック
・施設内でのマスク着用 *飲食時以外

森のアトリエ
・一度の入店人数を5名程度になるようご案内
・お客様入店時の手指消毒
・店内の常時換気

パン工房
・一度の入店人数を1組になるようご案内
・お客様入店時の手指消毒
・パンは原則個包装での陳列
・使用済みのトレー、トングはお客様ごとに洗浄して再使用
・店内の常時換気

ピザレストラン
・入店時には手指消毒をお願いしております。
・店内のテーブルは衝立を使用し飛沫感染を予防
・お客様ごとにテーブル、メニュー表はアルコール消毒を行い、衝立も水拭きを実施
・会話をする際はマスク着用を推奨
・店内の常時換気

Text&Photo:theGreen運営事務局